コンビニ泣かせの新聞、エル・ゴラッソ


エル・ゴラッソ*1、通称エルゴラは日本初のサッカー専門新聞である。扱うジャンルは国内は高校サッカー、海外は南米の諸リーグまでと幅広い。毎週月・水・金発行。大きさはタブロイド判、ページ数は20頁。一部130円。J2の試合にもプレビュー、採点、試合レポートなどを載せてくれるので僕のようなJ2サポにはとても有り難い存在である。最近の月・水・金はキヨスクかコンビニでエル・ゴラッソを買うのが朝の習慣になっている。
ところでこのエル・ゴラッソ、ちょっとコンビニ泣かせのところがある。
コンビニでエルゴラを買うといつもレジで一騒ぎ起きるのだ。
コンビニのレジでの精算は普通、バーコードリーダーで商品を舐めてそれで終わりである。でもエル・ゴラッソのレジ打ちはこうはいかない。レジ係の店員はエル・ゴラッソを手に取ると、リーダーを使わず手でレジを打とうとする。どうやらエルゴラはまだPOSのバーコードリーダーには対応していないようだ。
まあレジでの手打ちというのもよくある風景ではある。ところがエル・ゴラッソの場合、店員はレジを打とうとする手をすぐに止め、新聞の裏表をひっくり返してあちこち調べ始める。そしてあれこれ首をひねった挙げ句、コンビニの奥からエライ人を呼び出してレジの打ち方を教わる羽目になるのだ。この間約2,3分。朝の余裕のない時にエル・ゴラッソをコンビニで買うのはお勧めできない。
なんでこんなことになるのだろうか。原因の一つはエルゴラッソの定価表示がちょっと分かりにくいところにあるせいだろう。一面の右上のところに「定価130円」と書いてはあるのだが、そう目立つ文字で印刷されているわけではないし、まわりには「11/11、12号」とか「毎週月・水・金発行」といった文句がごちゃごちゃ印刷されているので、ぱっと見には、そのごちゃごちゃの中に「定価 130円」という情報は埋もれてしまって見つけにくい。定価が分からなければ確かにレジは打てない。
でもこれだけでは、あのもたつき振りはちょっと説明がつかない。そこでいろいろ考えたのだが、たぶんこういうことだと思う。
コンビニの場合、商品精算時にPOSに打ち込む情報は、商品の値段だけではない。買われた商品の種別や、商品を買った人の情報なども入力される。例えば僕が食玩付きのお菓子を買った場合、POSにはきっと「オタクがオタ系アイテムを買った」とか入力されるに違いない(笑)。
そしてエルゴラッソの場合、商品として属するカテゴリーがとてもわかりにくいのだろう。エルゴラはサッカー新聞である。だから報知やサンスポ、スポニチと同じスポーツ紙のカテゴリーに入るはずである。しかしエルゴラ、こういう既存のスポーツ紙とは版型が違うし雰囲気も違う。あいにく知名度も低いので知らない人にはスポーツ新聞として認知してもらえないのだろう。エルゴラと版型が同じ新聞となると夕刊フジやゲンダイがお仲間ということになるが、これまたあの手のケバケバ新聞とは明らかにジャンルが違う。かといって雑誌でもない。
そんなわけでコンビニの平店員がエルゴラに遭遇すると実行時の型判定が不可能になってやむなくスーパークラスであるエライ店員が呼び出されることになる……というギャグがわかる人は……このブログの読者には結構多いだろうなあ(笑)とにかく店員にとってはPOS入力に困る存在に違いない。そうじゃなきゃあんなにもたつきはしない。
いやそれ以前にエルゴラ、これが商品であるという認知がされているかどうかすら怪しい。この前なんかエルゴラ相手に首を捻っていたバイトっぽい兄ちゃんにこんなこといわれたぞ。

「お客様、これもお買いになられるのですか?」

客相手にこんなこというのだから、よっぽどエルゴラという存在が謎だったに違いない。こっちも一瞬、何を言われたのかわからなかったが、とにかく「はい」とは応えた。この時もやっぱり奥からエライ店員が出てきてようやく一件落着となった。
この「お買いになられるのですか」発言も大きな謎である。推測するにあの兄ちゃん、フリーペーパーかなんかと勘違いしたのだろう。エルゴラ、まったくもって罪作りな新聞である。
ところでこの一件、後で深く後悔したことがある。「お買いになられるのですか」と聞かれたときについうっかり「はい」と応えてしまったことだ。もちろん正解は「いや」とかの否定である。あの時そう言っていれば、運がよければエルゴラを一部、ただでもらえたかもしれない。そういう面白い出来事への可能性を「はい」などというつまらない返事で閉ざしてしまったのは、今となっては大いに悔やまれる。
どうも僕は都会でおもしろおかしく生きて行くにはまだまだ修行が足りないようである。