夢幻魔実也君24歳
- 作者: 高橋葉介
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 単行本
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夢幻紳士 (冒険活劇篇1) (ハヤカワコミック文庫 (JA844))
- 作者: 高橋葉介
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 文庫
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「逢魔篇」はミステリマガジンで連載中の「夢幻紳士」のコミックス第二巻。「冒険活劇編」は今から20年以上前に出たコミックスの多分2度目の文庫化。
文庫の方をあれこれ懐かしくチェックしているうちに冒険活劇編の奥付にある初出一覧の記述にちょっとピンと来るものがあった。
「脳交換クラブ」月刊Betty創廃刊号(1982年8月)
この月刊Betty創廃刊号という人を食ったタイトルの掲載誌も気になるが*1僕にとって重要なのは1982年8月という日付の方で、夢幻紳士の主人公、夢幻魔実也君は設定上の年齢を無視して人並みに歳を数えると今年で24歳ということになるのだ。厳密に言えば冒険活劇編の少年探偵夢幻魔実也君とミステリマガジンで連載中の迷宮編に出てくる幻視者夢幻魔実也氏は同一人物ではないらしく、作者がどこかで二人の関係についてなんか書いていたはずだけど細かい事はわすれてしまった。ともかく昔からお気に入りのキャラが活躍する本が新旧同時に出るとはとてもうれしい。まあ自分の姿を鏡に映せば見れば早川書房の抱き合わせ商法に踊らされている醜態が見えるし、便乗的に秋田書店から出た文庫版の「学校怪談 (1) (秋田文庫 (55-1))」までも買ってしまっては「高橋葉介馬鹿」と言われても返す言葉もないのだが、最近綻びの目立つなんちゃら2.0なんてBuzzWorldに踊らされて結局はググル様に貢ぎ物を捧げるよりは高橋葉介で踊りまくる方がずっとマシだ。アイちゃんもそう思わない?
さて夢幻魔実也君は24歳になった。24は人の世界ではまだ青年の部類に入るが、ザラ紙の向こうの世界ではかなり年寄りの部類に入る。最近ジャンプを読んでいないので今の状況はよく分からないのだけど、昔はあの雑誌のキャラの平均寿命は10週間に限りなく近かった。その一方で受けるとなるとやたら引き延ばしにかかるのがあの業界やこの業界の嫌らしいところだが、それでも10年選手くらいが関の山だろう。そんな世界で夢幻魔実也君は24年も生き延びて来たのだ。素直にエライとしか言いようがない。でも24歳はマンガの世界ではどのくらいのランクの年寄りなのだろう。還暦?米寿?百歳?
こうなると他のマンガのキャラクターの歳というのも気になりだして、思いつくまま適当に調べてみた。
- デューク東郷 38歳
- 「ゴルゴ13」さいとうたかお 初出1968年
- 両津勘吉 32歳
- 「こちら葛飾区亀有公園前派出所」秋本治 初出1974年
- エロイカ 30歳
- 「エロイカより愛をこめて」青池保子 初出1976年
どうやら夢幻魔実也君の24歳はマンガの世界では老人クラブで端っこのあたりに座らされる年齢らしい。同い年のキャラはざっと探した限りでは見つからなかった。
こうやってキャラの年齢をリストにして並べてみると驚かされることが多い。現役のキャラではゴルゴが最年長だと思っていたらアンパンマンも同い年なのか。稗田礼二郎の32歳はともかく伯爵も30代突入か。美形を保つのがそろそろ辛くならないか。そしてロック。まだ28歳だったとは。絶対30越していると思ったのに。不老不死のエスパーの歳を問うのは無意味かもしれないけど。
このリストから長生きするキャラの一般法則をでっち上げてみようと思ったがやめた。20年、30年の寿命を誇るキャラが生き延びたのは必然よりは偶然の要素の方が多かったのではないかと思う。成年のキャラが多いとは思うがあくまで印象に過ぎない。掲載誌が長く続いているというのは生き延びるには有利かもしれないがロックのように背中に骸の群れを残してなお生き延びるキャラもいる。この前もビブロスが死んだばかりだ。
キャラを創った作家の創作歴が長いというのが共通点だがそれは当たり前すぎるし、作家歴は長くてもキャラの寿命は短いという漫画家も多かろう。というかそれが普通だ。
そもそもキャラと作家、作家性を結びつけること自体が誤りだし古いだろう。書店の新刊コミックの棚には手塚じゃないブラックジャックが並んでいる。今のキャラ産業のありかたを見るに、もはやキャラというのは特定作家と結びつけられない方が生き延びるには有利かもしれない。
強いて言えばキャラが長生きをするための秘訣はただ一つ、愛される。それだけだろう。