勉強しなきゃ

今朝は珍しく半蔵門線で座れた。といっても三人掛けの座席に男三人で座るという物理的にちょっと肩身の狭い状況だった。
僕が座ったのは座席の真ん中で、右隣は二十代後半くらいのサラリーマン風、着ているスーツには皺一つなかった。左側は青いジャンパー姿のラフな格好、年齢は三十代半ばというところだ。
この二人、見た目も雰囲気も違うが、偶然の一致というか、一つ共通点があった。どちらも横書き数式混じりの本を膝の上に広げていた。たぶんなにかの教科書だろう。この寸身を惜しんで勉強する二人の間で、昨日出たばかりの「XXXHOLiC」8巻を読むのは精神的にも肩身が狭い。いかん電車の中でマンガなんか読んでいると、世の中に置いて行かれてしまうぞ。勉強しなきゃ。
でも幸いなことに追いつくチャンスは充分にありそうだ。二人とも勉強熱心なのは膝の上だけで、おつむの方は事情が違っていた。これまた偶然の一致というか、二人とも後頭部を電車の窓にぴったりつけて目を閉じている。なかなか微ましい光景である。難しい本を読んでいる間に眠ってしまったのだろう。朝とはいえ金曜日だからなあ。僕も結構疲れが溜まっている。
それにしても睡眠薬代わりになったのはどんな本だろう。たぶん何かの専門分野の本だろうが、後学のためというか、少し興味が出てきたので、右隣の人の本をちょっと盗み見してみた。ページに書かれている文字は概ね細い明朝体、数式も細い字体で書いてあり、横からだとちょっと読みにくい。でもページの左上のあたりにゴシックボールドの大きな字で書いてある章題は、はっきり読めるどころか意味までちゃんとわかった。嫌になるくらいに。

6.3 継承


継承ですか!
そして何かの数式に見えたのはよく見てみると、class Foo extends Bar{で始まるお馴染みのクラス定義だ。これJavaのサンプルコードじゃないか、
嫌な予感がしたので、左隣の人の本はというと、なんてこった!こっちの本には、ページを真横に走る薄灰色の帯の上に目立つ字体で「文字列のコピー」って書いてあるぞ。C言語の教科書でお馴染みメモリー上の文字列の図解、正方形が横一列に並んでいるイメージ図もちゃんとある。
どっちもプログラミングの教科書じゃないか。この二人同業者?。同業者が三人同じ座席に座っているのか?
でもこの二人の本、Javaの本もC言語の本も明らかに入門書レベルで、プログラミングの本としても入門書レベルのようだ。おまけにどっちの本も説明文の分量が少ないからページがスカスカで白く見える。素人が見た目に騙されて買う本だな。
今時JavaC言語でプログラミング趣味っていうのは違うよな、というわけで素人さんがプログラミングを眠くなるまで勉強しなきゃいけない理由をあれこれ詮索してみたが、そのうち首筋のあたりが寒くなって来た。世の中、上の方は景気が良くなって来たのかもしれないが、地下鉄の住人としては、今時そんな冷たい理由しか思いつけない。

やっぱり勉強しなきゃ。