究極の文房具カタログ-マストアイテム編

究極の文房具カタログ【マストアイテム編】

究極の文房具カタログ【マストアイテム編】


究極の名に偽りなし。
近年、文具をテーマとした単行本、ムック、雑誌の特集記事よく見かけるようになったが、嘆かわしい事に物欲ばかりを煽る企画が多すぎる。海外メーカーの高級文具、国内老舗のオリジナル品といったレアアイテム同然の文具をこれでもかと並べ、達人のコメントと称する蘊蓄ばかりが前に出る。こんな欲道にはまった日には、ワンフロアの文具屋には飽き足らなくなり、銀座伊東屋本店地上9階地下1階を上から下まで舐めても味気なくなり、神楽坂、神保町、御茶ノ水へと伝説の文具を求める長い旅が始まる。この瞑府魔道の行き着く先は南青山書斎館、10万超の限定万年筆だ。
こんな文具界の世紀末に終止符を打つのがこの本だ。なにせいきなり出てくるのがPilotのVコーン、一本105円のボールペンだ。これに続くはペンテルハイブリッドテクニカ157円、uni POWER TANK210円と、どこでも買える、下手するとコンビニでも買えてしまう、財布にも優しい文具が次々と登場する。
もちろん安いばかりの本ではない。ゾーリンゲンの鋏4305円、ニチバンの南部鋳鉄テープカッター4200円、カシオ本格実務電卓15540円と急所を押さえるポイントではちゃんとしかるべき品が出てくる。Moleskineのポケットノート1680円、ラージノート2625円が出てくるのもポイントが高い。、安価なもので足りるところで大枚はたいたりはしないし、足りるためなら惜しみなく金をつぎ込む。その徹底振りが素晴らしい。
また写真ではなく著者直筆のイラストで文具を紹介しているあたりもポイントが高いところだ。イラストが描けるということは、著者は自分が描いた文具の全てを隅から隅まで熟知しているということだ。そのイラストに添えられているコメントも使いこなしのハウツーが前に出る文房具を美味しく使うためのレシピとなっている。
とはいえただの味気ないハウツーばかりが並んでいるわけではない。Pilotグリップボールペンに添えられたコメントにはTVチャンピオン「第四回全国文房具通選手権」のもっとも過酷な競技、ボールペンマラソンの苛烈な経験が綴られている。各選手が自らの命運を託したボールペンを手にして、インクが切れて書けなくなるまで延々と線を書き続けるというこの競技、人知を越える13時間半の死闘の物語は涙なくしては決して読めない。
こんな究極の本がたった1500円+税で買えてしまうのだからいい世の中になったものだ。今すぐ書店に走るもよし。上のサムネイル画像をクリックしてAmazonで買ってくれるのなら僕はとても嬉しい。