100円のハリポタと1000円のハリポタ


ハリー・ポッターと賢者の石 (1)

ハリー・ポッターと賢者の石 (1)


とある大きめのBook OFFに行って、普段はあまり行かない単行本のコーナーに行ってみた。いやBook OFFはたまには行くんですけど、いつもはもっと手前のコミックのあたりで足が止まってしまうのですよ。ははは。
そしたら驚いたのが半分、こんなものだろうと納得したのが半分、外国人作家の棚のかなりの部分をファンタジーが占めているじゃありませんか。すぐに目についたのは、背表紙にでっかい字で書かれたタイトルがいやでも目に入る「ダレン・シャン」、次がみなさんおなじみ「ハリー・ポッター」、僕は便乗商法イクナイと思った「指輪」の大型本や「ハウル」なども。
お値段はというと、「ハリー・ポッター」は値付けがシビアで、「炎のゴブレット」が定価3,990円のところ箱入りで3000円 、箱なしで2800円。「賢者の石」は定価1,995円のところ1000円。まあ「賢者の石」はすぐ側に携帯版「賢者の石」950円が500円の値札をつけて置いてあってはたとえ1000円でも高すぎるかもしれない。
それにしても立派な本ばかりだ。この手の本は映画その他で煽られて話の種にってことでどどっと売れるも、値段が高いし嵩張るしってことで飽きたらすぐにドナドナされてしまうのだろう。「ハリーポッター」や「ハウル」といった錚々たる魔術師の名をタイトルに持つ本が並ぶ棚は、墓碑銘が刻まれた石碑がずらりと並ぶ夢の墓場のようだ。これが普通の古本屋ならカタコンブに例えるところだが、BookOFFはさすがにそこまではひどくない。
いささか嘆息しつつBook OFFの棚の間をさらに奥へと進む。するとまた「ハリポタ」の墓碑銘に遭遇、1冊105円のコーナーに「賢者の石」と「秘密の部屋」の大型本が2冊づつ置いてある。
思わず手にとって検分。さっきの1000円本との違いはというとカバーが多少すれて白くなり細かい汚れが少しあるくらいだ。このカバーの白くすれたところを見て、うちの「ゲド戦記」婆さんのことを思い出した。ガキのころに買った、今じゃ表紙がすっかり白髪だらけのあの本のことだ。あの婆さんに比べればここのハリポタは、四捨五入すると三十歳くらいのお嬢さんというところか。このお嬢さんが100円だとするとうちの婆さんはいくらだ?値が付かなかったりして。たぶんそうだろうなあ。
500円出してここのハリポタ全部かっさらってAmazonで売りさばこうかと思ったがやめた。BookOFFで100円のものはAmazonでも100円がいいところだ。もっと薄くて小さい本なら、Amazonから支払われる配送料とクロネコメール便との差額を狙う手もあるけど、ハリーポッターの大型本ではどうみても足が出そうだ。業者かプロの人じゃないと100円のでっかい本を売るのは引き合わないだろう。
しかし納得がいかないことがある。新品、1000円、100円、婆さんと価値が下がっていく間に失われるものはなんだろう。本の中身が失われるのではないのは確かだ。新品の「ゲド戦記」もうちの婆さんも中身はは全く同じはずだ。蟲師あたりに出てきそうな文字を食う蟲でも住み着いていなきゃの話だが。
では表紙なのか?それにページ。確かに安い本ほど表紙もページも消耗している。すると失われるのは紙なのか。それも上っ面の部分。つまり我々は本の外側、紙の表面、厚さ0.01mm満たないくらいの表層に金を払っていることになるのか。本全体の割合からすると0コンマ0何パーセントにも満たない部分、そこにしか本の価値はない。そういうことになるのだろうか。