アップルストア仙台の周辺事情


帰省した折りにアップルストア仙台一番町に行ってみた。
行った日は年が代わった1月の3日。アップルストア仙台のある一番町商店街は仙台一の繁華街なのだけど、この日の一番町は普段の休日よりも人通りが少ないように思えた。仙台の初売りは二日なので、その反動でこの日はみな外出を控えたのかもしれない。それにこの日は雪が降ったりやんだりの、外出する気が失せるような寒い一日だった。東北というイメージからは意外に思われるかもしれないが、実は仙台、雪はそう深刻には降らない。山間部はともかく都市部で雪が積もるとみんなが困ってローカルニュースの記事になるような土地柄だ。


そんな一番町の人気のなさが反映したのか、アップルストア仙台の人の入りも少ないように見えた。鰻の寝床のような細くて長い店内に客は二十人はいなかったように思う。おかげで展示してあるMacにもiPodも触り放題で店の中は誰にも邪魔されずにすいすい動けた。銀座のアップルストアとは大違いだ。お目当てのアイテムは肩越しに拝むしかなく、客と客、客と店員がごちゃごちゃと動きまわる、あの熱気を帯びた雰囲気はここにはなかった。そりゃ銀座の旗艦店と仙台の出来たばかりの店を比べるのは酷かもしれない。でも仙台駅東口ヨドバシカメラに比べても店内の空気が寂しいというのはちょっとまずいだろう。


そう、ヨドバシが問題なのだ。かつて仙台はパソコンショップの激戦区と言われたころで、20世紀末のころはヨドバシを始め、ラオックスさくらやソフマップといったどこでもおなじみの店が仙台市内で覇を競っていたが、世紀が代わったあたりからヨドバシ以外の連中はみな消えていった。駅周辺で生き残ったのはパーツ系のくらいだ。消えたのは外部資本の店だけではない。昔は仙台の商店街にも電気店がいくつもあったのだが、これもみんな消えて行った。今の仙台、中央通りのダイエーに入っているベスト電器を除けば街中で売ってる伝記の匂いのするものはCD、DVDか携帯電話くらいしかない。今の仙台の街中で電気店やコンピュータショップを新規開業するのは全くの自殺行為に見える。


でもアップルも問題なのだ。アップルストアができた一番町周辺は近年ブランドファッションの集積地になっている。ビトン、エルメス、グッチ、ティファニーは一番町のデパートに入っている。セレクトショップユナイテッドアローズだけは駅前にあるが、シップス、ビームスは一番町にある。あるいはコムサ何とか系、その他僕の乏しいファッション知識ではなにがなんだかわからないし、業態すら何と呼べばいいのかわからないような店が一番町周辺には集まっている。そうしたブランド、ファションものの店が集積しているほぼど真ん中にアップルストア仙台はあるのだ。


よく言われることだが、たぶん今のアップルは自分達のことをコンピューターメーカーだとは思っていないのだろう。同じ通りに路面店があるセリーヌ同様、自分達のことを世界的なブランドだと思っているに違いない。そうだとしたらコンピューターショップ不毛地帯の仙台に出店するという決断も、、ブランドが並ぶ一番町に店を構えるという決定も理解はできる。


でもアップルはブランドの力を過信しすぎているように思える。確かにiPodならブランドの力で売れるかもしれない。でも仙台でブランドを頼りにMacを売るのは辛いと思う。それに東口にはヨドバシもいる。アップルストアで買えるものはヨドバシでもやっぱり買えるのだ。そして僕のみるところ、仙台にはアップル製品を売る店が二つも存在できる余地はないと思う。


ちなみにアップルストア仙台のすぐそばにはHMVがある。広瀬通の向こう側にはサンマルクカフェがある。藤崎の方に行ったところには大戸屋まである。少し東京の感じがする場所ではある。