万延元年の遣米使節団

万延元年の遣米使節団 (講談社学術文庫)

万延元年の遣米使節団 (講談社学術文庫)

読み途中。
遣米使節団といっても咸臨丸の話ではなくて、ポーハタン号で渡米し、ホワイトハウスで日米通商条約の批准書交換を行った正使一行の話。
遣米使節としてはこちらの方がメインだったのだが、遣米使節団の米国での足跡は、咸臨丸組ほどは知られていない。というのは咸臨丸組からは勝海舟福沢諭吉、ジョン万次郎、福地源一郎など著名人が綺羅星のように輩出されたのに対し、正使組の面々は幕末維新の歴史に埋もれてしまったからだ。明治になってから時の米国大使モーリスが、遣米使節団の正使、新見豊前守の墓参をしたいと言い出したら、外務当局はおろか歴史家すら墓のありかがわからず、東京在住の新見姓の者を虱潰しに尋ね歩いたいう笑えない話もある。また小栗忠順、玉虫佐太夫など朝敵の汚名を着せられ悲劇的な最後を遂げた人物もいる。そのため遣米使節団の米国での足跡は、一次資料だけは豊富なのだが、学術論文以外には著作になる機会が少なかった。使節団に参加した人物の伝記も小栗忠順のものくらいしかない。それゆえこの本は存在自体が貴重である。
本書を読んで驚かされるのは米国における遣米使節団に対する異常としかいいようのない歓迎ぶりである。特にニューヨークにおける歓待ぶりは想像を絶している。使節団の訪問自体が馬車二十六台を連ねてブロードウェイを北上するという一大パレードになってしまったのだ。沿道は日本人を一目見ようと押しかけた見物客で埋め尽くされ、ハンカチや帽子、さらには日章旗を振って使節団を出迎えたという。著者は遣米使節団がここまで歓迎された理由として、日本に対する商業主義的関心や、日本人に対する物珍しさなどを上げているが僕はこれだけでは説明がつかないと思う。この現象を解明するには米国サイドからの研究が必要だろう。

その他、関連文献。この本の参考文献のところに並んでいる本は「新訂 福翁自伝 (岩波文庫)」以外は簡単に手には入りそうもない本ばかりなので少し文献をリストアップしてみようと思ったのだが……

名著。残念ながら絶版。歴史好きの人は古本屋などで見かけたら何が何でもGetすること

名著。これも絶版かよorz
咸臨丸に乗った一番偉い人、木村摂津守の伝記。勝海舟が人間としてはセコく、船乗りとしては無能だったかがよくわかる本。

絶版の嵐だ。なんてこった。
遣米使節団の監察役を務めた英傑。鳥羽伏見の戦いの後、逃げ帰ってきた徳川慶喜に対し、主戦論を主張して罷免され、領地に隠遁したところで官軍に捕らえられ斬首される。テレビの知ってるつもりで取り上げられたのがきっかけで評価されるようになった。

脳内図書館から引っ張ってきた本はことごとく絶版であるか。なんともはや。
というわけで「万延元年の遣米使節団 (講談社学術文庫)」がいかに貴重な文献であるかみなさんよくわかりましたね(泣)。

追記

明日愁来明日愁様から司馬遼太郎の「「明治」という国家〔上〕 (NHKブックス)」の第1章、第2章で遣米使節団と小栗忠順について扱っているとのTrackBackを頂きました。

「明治」という国家〔上〕 (NHKブックス)

「明治」という国家〔上〕 (NHKブックス)

さっき確認してきました。第1章で遣米使節団、第2章で小栗忠順を扱っています。
ご指摘感謝します。

追記の追記
書名が欠落していました。