標準とパッケージ

標準化活動が下手なことに加え,そもそも標準をまとめること自体苦手という問題もある。技術でもマネジメントの仕組みでも,自社自分のものを他社他人が使える汎用品に仕立て上げた上で,標準として提唱する必要があるが,この「汎用化」が難しい。ITでいえば,パッケージ・ソフトウエアを作れるかどうかの問題と言える。日本企業はソフトウエアを個々の企業に合わせて改変するカスタマイズの力では世界一ではないかと思えるが,機能を絞ったり標準的なやり方に変える作業になると途端に弱くなる。

日本においてパッケージソフトの利用が進まない原因については、過去から何度も議論されてきている。拙著『ソフトウェア最前線』でも、過去に指摘された4つの理由を取り上げた。

第1の理由は、日本企業は情報システムの細部にこだわり、他の企業の情報システムとは異なっているという独自性を好むからである。画面や帳票のフォーマットにこだわるケースもあるし、同業他社と同じシステムでは差別化ができないという理由で、独自仕様のシステムを構築しようとするという説である。

第2は、エンドユーザーのリテラシーや技術レベルが高くないためにパッケージソフトに業務を適合させることができないからという理由である。業務用パッケージソフトは、ある仕事の流れを仮定して開発されているため、仕事の進め方や組織の役割分担を見直す必要が出てくる。また、独自開発のソフトウェアと違って、細かなところまで作り込みがなされていないので、エンドユーザーの負担が重くなることがある。これがパッケージソフト導入の障害になっているという説である。