見えざるツッコミ

高木浩光@自宅の日記の11月21日の日記(http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20041121.html#c01)に日経コンピュータ栗原雅記者を名乗る人物がツッコミを入れている。高木浩光氏と栗原雅記者の関係は高木浩光氏の10月16日の日記、「日経コンピュータは天然なのか病気なのか」を読めば一目瞭然である。というかネット上ではなぜかこの日の日記は「栗原雅が真っ赤な顔をしてキーボードをたたいている様子が目に浮かんでくる。」というタイトルで通っているらしい。
高木浩光氏の日記はhatenaから最近流行の事情でtdiaryに移行された。ツッコミ機能は「ツッコミ」という名称も含めてtdiaryの売りの機能である。よって高木浩光氏の日記の日記にツッコミが入る事自体は別におかしくはない。
しかし高木氏の場合、ご自身の日記ではツッコミ機能は使えないようにしてあるのだ。

ツッコミ機能(コメント機能)は使わないことにします。隠してありますので、仮にツッコミが書き込まれても、私も目にすることはないでしょう。

HTML上はツッコミ用のフォームがあるのだが、CSSでコメント欄もろとも見えなくされている。11/21の日記にも見た目上はツッコミがなされた形跡はない。BloglinesなどのRSSリーダーを使った場合にのみ見えるという、高度なツッコミである。
ツッコむにしてもフォームが見えないんだから普通のやり方ではツッコミは入れられない。ユーザースタイルシートでも使ったんだろうか?
ところで少し話は飛ぶが、あのACCS事件、いわゆるOffice氏不正アクセス事件の争点は毎日新聞の記事によると以下のようなものらしい。

争点となっているのは、2点である。まず第1に、起訴状の「アクセス制御機能を有するサーバーコンピューター」という部分。つまりoffice氏が侵入したとされるASKACCSCGIプログラムには、アクセス制御機能があったのかどうかという点である。そして第2に「特定利用の制限を免れる指令を入力し」という部分。CGIプログラムに引数を渡すという行為自体が、「特定利用の制限を免れる指令」といえるのかどうかという点だ。

いずれもCGIという特殊なプログラムをどう捉えるかによって解釈は変わってくる。裁判所がどう判断するかはまだわからないが、すくなくともセキュリティ業界では「CGIにはアクセス制御と呼べる機能はない」「CGIプログラムに引数を渡すのは当然の行為で、これを不正アクセスと認定するのは行き過ぎ」と受け止めている専門家は多いようだ。不正アクセス禁止法の拡大解釈ではないかと危惧する声も少なくないのである。

 法廷でも、この点についての議論がことあるごとに繰り返されている。圧巻だったのは、10月20日に行われた被告人質問だった。検察官は「あなたは ACCSが意図していない利用を行ったのではないか?」「ウェブサーバーにはFTPでアクセスするのが通常の方法なのに、あなたがHTTPでCGIにアクセスしたのはイレギュラーではないか?」といった質問を立て続けに繰り出した。つまりoffice氏の行為がACCSの意図していない方法で「勝手に利用した」ものであることを立証しようとしたのである。

この検察側の論理をあのツッコミに適用すると、「高木氏が意図しないやり方で勝手にツッコミを入れた」こと、つまり不正アクセスになるんだろうか?ちなみにツッコミが入れられた11月21日の日記のお題は「不正アクセス禁止法 続・数理的理解の試み」であるから、このツッコミは高木氏に対するかなり高度でひねくれた挑戦なのかも知れない。

なお冒頭で「栗原雅記者を名乗る人物」と書いたように僕はこのツッコミの主は騙りだと思っている。記者がこういう形でネット上の記事に反論するとは思えない。