教養股旅小説

草笛の音次郎 (文春文庫)

草笛の音次郎 (文春文庫)


博徒が主人公のBildungsroman。
こう書いただけで矛盾は明らかだ。
生まれて初めて旅に出た主人公がさまざまな人達との出会いを通して成長していくという典型的なとても明るい教養小説なのだが、でも彼は博徒なのだよ。そのくせ最後にはネタバレになるけどご公儀からご褒美までもらってしまうのだ。
とてもおもしろい小説。特に親分衆の描写が秀逸で綿引勝彦並にカッコイイ。だけど始終ツッコミを入れたくなるのだ。これは人生の裏街道を行く渡世人が歩く道じゃないだろう。いっそ堅気になったほうがええんやないかと。