トリノ五輪で日本が惨敗したのは原田のせいだ
というのはちょっと大げさだが、ジャンプノーマルヒル予選における原田雅彦選手の失格騒動がトリノ五輪に挑む日本選手団が描いたシナリオを狂わせてしまったのは確からしい。日本オリンピック委員会常務理事でトリノ五輪選手団長を勤めた遅塚研一氏が今週号の日経ビジネスに載ったインタビュー記事でそう語っている。*1
原田選手は五輪出場がトリノで五回目という超ベテランである。そのベテランが有終の美を飾ることにより日本選手団全体の士気を上げる。そんなシナリオを選手団首脳部は考えていたようだ。つまり原田選手には成績は求められていなかったのだ。競技者としての役割を完遂すること。成績の如何にかかわらず最後まで挑戦し続けること。選手団首脳部はそれだけを求めていた。
ところが原田選手はその期待を大きく裏切った。体重規定違反による失格という最悪の形で予選落ちしてしまった。これが首脳部の逆鱗に触れたらしい。せっかくチャンスを与えてやったのになんてザマだということだ。しかも遅塚選手団長にはその後のマスコミ取材に応じた原田選手の態度がヘラヘラしたものと見えたようだ。これが原田選手に対する怒りに輪をかけている。原田選手は現役続行の意思は見せてはいるが、JOC首脳部をここまで怒らせてしまった原田選手が次のバンクーバー五輪に出られるとは思えない。
ちなみに遅塚選手団長がひっぱり出されたインタビュー記事というのは、みなさん御存知「敗軍の将、兵を語る」である。遅塚氏はこの記事で原田選手以外にもあれやこれやと敗軍の兵について語っている。遅塚氏は今の日本の強化体制、各競技をできるだけ広く支援するという方針にかなり不満があるようで、支援対象を有望な競技に絞り込み、しかもジュニア年代から選抜したエリート層の競技者をJOCの管理下に置いて、ここに集中投資するというやり方に変えたいらしい。もちろんそこには苛烈な競争原理が導入されるのだ。
なお遅塚研一氏のJOC理事以外のスポーツ界の肩書きは日本アイスホッケー連盟の副会長である。つまりあの堤義明氏の置きみやげなのですね。だから原田選手についての裏事情をこんなにも赤裸々に語れるのだろう。