祝マネー・ボール、文庫化

マネー・ボール (RHブックス・プラス)

マネー・ボール (RHブックス・プラス)

メジャーリーグ、それはアメリカに残された最後のフロンティア。ありとあらゆる分野で効率と革新を求める米国社会においても、メジャーリーグだけは例外中の例外だった。監督やスカウト達はベーブルース全盛期に確立されたセオリーをひたすら墨守し、オーナーやGM達は大恐慌以前の大立者のように大金を浪費して省みないという、前近代的なビジネスがまかり通っていたのだ。本書はそんな米球界にアメリカ流合理主義を引っさげて挑んだ貧乏球団オークランド・アスレチックスGMビリー・ビーンの驚異に満ちた物語である。
2004年の邦訳出版時*1に100人中99人が絶賛し、1人だけがちょっとケチをつけたという伝説の好著がついに文庫化。しかも単に文庫化されたというだけではなく、「ベースボール宗教戦争」と題する30頁近いあとがきが追加されている。
これは「マネー・ボール」後日談と言えるもので、著者が「クラブ」と呼ぶオールドファションな既存の球界がビリー・ビーンに代表されるマネーボール派を弾圧するという抗争劇が克明に描かれており、確かに「宗教戦争」というタイトルがふさわしいのだ。新参者イビリであるとか、あるいは斬新な手法を駆使して好成績を上げてきたパイオニアがちょっと転ぶと、周りの守旧派の連中が鬼の首でもとったかのように大喜びするという光景は、日本の専売特許だと思っていたが、この「ベースボール宗教戦争」を読む限りではアメリカでもボールパーク周辺では日常的に見られる光景らしいのである。
まだ読んでない人は是非とも読むべき。単行本は読んじゃったという人もこのあとがきだけは読む価値はあると思う。