シムソンズ

シムソンズ公式サイト
http://www.sim-sons.com/

カーリングのメッカ、北海道の常呂町を舞台とした、笑いあり、涙あり、感動ありの青春グラフティー。「孤独な天才少女」、「おまえたちはゼロか?ゼロなのか?」、「傍目には笑える珍練習」、「親には塾に行ってることにしてある」、「コーチの暗い過去」、「チーム解散の危機」、「ついに決勝戦、相手は……」というスポーツもの必須のキーワードを手際よくまとめた秀作。カーリング加藤ローサというネット者ならもうはずせない二大アイテムを抑えた企画の勝利でもある。まあカーリングの方はオリンピックを当て込んだ先物買いだったのかもしれないけど、それが見事に的中したのは間違いない。
とにかくカーリングチームの女の子達がよいのである。加藤ローサはちょっと寅さんっぽい二枚目半を巧みに演じている。藤井美菜の天才カーラーのとんがりぶりもよい。高橋真唯のおさげのとっぽい眼鏡っ子は存在感抜群だし、星井七瀬はどうみても普通に見える女の子を的確に普通に演じている。それからなんと言ってもコーチ役の大泉洋。面構えからして往年の西田敏行を彷彿とさせるじゃが芋系の兄貴臭さ、親父臭さがたまらないのである。
こんな素晴らしい映画が渋谷のシネ・ラ・セットを除けば、ワーナー・マイカル系でしかやっていないのは惜しまれる。僕が見た新百合ヶ丘のマイカルではがら空きだったぞ。もうトリノ五輪も終わったし、今週末からは「ナルニア」始め春休みに向けて大作、話題作が目白押しになる。このままでは「シムソンズ」は一部で大好評というカルトムービーみたいな映画で終わってしまうではないか。実に惜しいなあ。
惜しいと言えばもう一つ。せっかく北海道が舞台なのに、作中の時間の流れや空気感が横浜あたりのままで、いかにも地方に行ってロケしてきましたという雰囲気が拭い切れないのである。このあたりはもっと工夫が欲しかったが、でも地方の空気をそのまま出すと結構シビアになるからなあ。実はシムソンズソルトレークシティー五輪に出場したカーリングチームがモデルになっているのだが、現実は映画ではややネタ的にあつかっていた田舎の閉塞的状況を地で行っていたようだ。でも現実の「シムソンズ」も映画の中の「シムソンズ」と同様、ひたすら前に進み続けている。

小野寺と林はソルトレークシティー冬季オリンピックにも出場し8位の成績を残している。が、帰国後カーリングを続ける環境はなかった。地元の北海道常呂町では仕事も得られない。そこで一念発起した小野寺は、林を誘い競技を続けるために青森県への移住を決意する。青森市の職員となってトリノを目指したのだ。本橋、目黒、寺田も北海道の高校を卒業すると先輩二人を追いかけて青森へやってきた。敗退の後、小野寺が涙を流し「五輪にもう一度出たいという夢にみんなが付いて来てくれた。何と言って感謝していいか分からない」と言ったのは、彼女たちにしか分からないカーリングをめぐる冒険の日々があったからだ。「カーリングを広めたい」という彼女たちの熱い思いは、会場となったピネローロで大きな実を結んだ。

映画「シムソンズ」はこの「彼女たちにしか分からないカーリングをめぐる冒険の日々」を僕達にも見せてくれている。

原作


シムソンズ

シムソンズ


原作は結構探したのだが軒並み品切れ。
版元ポプラ社のサイトですら品切れで、Amazonマーケットプレイスではロープライスでも定価の倍近い値段で売られている。
増刷はされているようなので気長に待つしかないか。