司馬遼太郎と藤沢周平―「歴史と人間」をどう読むか


司馬遼太郎と藤沢周平―「歴史と人間」をどう読むか (知恵の森文庫)

司馬遼太郎と藤沢周平―「歴史と人間」をどう読むか (知恵の森文庫)


藤沢周平について最近思うところがあって、そのためタイトルに惹かれて買ってしまったのだが、もうドスカな本。
国民作家、司馬遼太郎を貶めるために藤沢周平のことを市井の人、無位無冠の人とやたらに持ち上げているが、銀座で政財界のお歴々と飲み明かす有名作家のどこが市井の人で無位無冠なのだ?
司馬遼太郎に対する批判は、大岡昇平福田和也の批評を借りてきた部分は概ね当たっていると思う。でも司馬遼太郎は狭義の文学者でもなければ歴史家でも思想家でもない、ただの小説家だったのだ。だから司馬作品を文学性や歴史観の欠如で批判するのはないものねだりである。
むしろ批判すべきは司馬史観とかいう幟を上げて、司馬遼太郎マル経やアカデミズムに対抗する大御輿に担ぎ上げてしまった周囲の反知性的な有象無象のほうだろう。
ところで巻末の宮部みゆき佐高信にちょっと興味深いことが書いてあった。

「今のわかい人には、働かない人がふえていますよね。就職難で仕事がないというのではなくて、それは政治の責任ですから、最初から働かない人ですね(宮部)」

1990年代末期の対談だが、そのころからこういう風に言われていたのね。