仙台駅

マグニチュード7の大地震に襲われた都市の避難所のような状況である。床に座り込んで呆然としている人が大勢。もちろん彼らは帰るべき家を失ったわけではない。家に帰るための手段を失った人たちである。僕も避難民の仲間入りをした。
これまた大震災直後にふさわしい光景だがマスコミがウザい。仙台駅にはかつてサザエさんのオープニングにも取り上げられたこともある有名なペデストリアンデッキがあるのだが、そこの手摺にパラボラが一輪咲いていた。パッと見にはその辺の衛星放送のパラボラと同じに見えるのだが、NHKのロゴが入ったそいつは同族とは逆に映像を全国に送っているのだろう。
駅前にはTBC,東北放送のロゴが入った車も停まっている。
駅構内の床のあちこちに太いケーブルがうねっている。歩くのに邪魔だし、キャスター付きのバックにとってはもっと邪魔だ。このケーブルの先は当然テレビカメラに繋がっている。
仙台駅三階の新幹線コンコース。今日本で一番マスコミ露出度が高い場所だと思うが、三脚に載せられたり、肩に担がれたりしているテレビカメラが数台、常に周囲をヲチしている。僕の顔も抜かれたかもしれない。
テレビカメラとマイクを持ったリポーターに捕まった人がちらほら。たまにテレビカメラの前で何かの打ち合わせが始まる。仙台駅はテレビの公開収録の現場と化してしまった。足りないのはバラドルと吉本系のお笑い芸人くらいか。

腹が立つのは疲れ果てて床に大の字になっているお子様に肉薄するテレビカメラ。とぼとぼ歩いていく家族連れの後ろ姿をカメラで捉える新聞記者。フラミンゴ、じゃなくて禿げ鷹に襲われた少女を撮ったカメラマンのことを思い出した。彼は自殺したんだっけ。
駅の外でも座り込んでいる人をみかけた。この日差しの強い午後に外で座らなくてもいいだろうと思うのだが、駅の中の座れそうな場所は既に占有者がいる。階段の端には人が上から下まで数珠繋ぎになって座っている。太い柱の回りには新聞紙が敷かれ、人が寝転がっている。まるでホームレスのような有り様だが、事実彼らは今日一日だけは帰る当てのないホームレスの身の上であった。