ウォー・フィーバー(戦争熱)/J・G・バラード著

福武書店 ; ISBN:4828840338 ; (1992/01)
第三次世界大戦秘史 福武文庫 ISBN:4828832998 ; (1994/10)
ここで書いてみたくなる本がみんな品切れ入手困難とはどういうことだ?
Amazonでは文庫版に4000円なんて値がついているぞ.
主人公は内戦下のベイルートで戦う少年兵士で,えーと....
昔読んだ話なので,細かいところは覚えていないのだ.そんな人間が書評を書くのもアレなので人様の書評を二つ紹介する.

ベイルートで戦う若き兵士ライアンは、果てしなく続く内戦に疑問を持っていた。
王党派、キリスト教徒軍、共和派、国家主義派、原理主義者....誰もがもはや信じるものの為に戦ってはいない。ただ、繰り返される残虐行為、裏切り、報復、そして過去から持ち越され、自分たちさえ持ち堪えられないほど肥大してゆく、憎悪の為に戦闘は続いているのではないかと。駐留している国連平和維持軍でさえ、どちらかに荷担することなく食料を供給し、負傷者の手当てをし、遺族には金を支給し、密輸入される武器、弾薬には目をつぶっている。なぜ誰も平和を求めないのだろうかと。

(中略)
ライアン達が平和な風景を喜び、語り合っていた時、突如爆弾が炸裂し街は再び戦闘が始った。ブルーのヘルメット、ベレー帽はどぶに捨てられた。ライアンは自分の家族が他の党派に人質として連れ去られたことを知るが、彼自身は国連の基地に連行され、ベイルート内戦について驚愕の真実を聞かされるのだった。

それでもタイトル作「戦争熱」の末尾がいきなりヒューマニストになる誤訳は疎ましい。あのラストは、戦争熱を世界に広める決意を固めた主人公のせりふなんだから、「とことんやると人類絶滅だぜ」とやるのが正しい。他にもあるが、こんなチェックを無料でやるほどの暇も善意もない。ただ、こうした費用対効果の低さには留意されるよう読者のみなさまには警告しておく。この文を差し引いても、決して損な買い物ではない。
間を埋めると,このベイルートの内戦というやつが,国連が行っている,戦争をコントロールする手法を研究するための実験だったのだ.ベイルートの外の世界ではライアンたちを実験台にして得られた知見を元にして,世界の平和が保たれていたのである.真相を知ったライアンはベイルートの兵士たちを外の世界に放ち,全世界を戦争に巻き込む決意をする.
読んだ当時も空恐ろしい話だと思ったが,あきれたことに今になってこの話の真の恐ろしさに気が付いた.
これは現実に起きてしまった出来事なのだ.
ベイルートアフガニスタン,少年兵士たちをアルカイダとすると今現実に起きている出来事にピタリと当てはまる.そして主人公ライアンはオサマ・ビンラディンだ.
戦争熱は全世界に広まっている.

山形大先生が言われるように「決して損な買い物ではない」.でも絶版文庫とはいえ4000円は高いッスよ.

追記

イラク駐留米軍は10日、米軍とイスラムスンニ派武装勢力との激しい戦闘が続いている同国中部ファルージャでの停戦を武装勢力側に提案した。米国が昨年5月にイラク戦争の大規模戦闘終結を宣言して以降、米軍がイラクで停戦を提案したのは初めて。

11日付の米紙ワシントン・ポストは、新設のイラク陸軍の部隊が5日、中部ファルージャをめぐる戦闘で米海兵隊を支援してイラク人と戦うのを拒否したと報じた。

イラク中部ファルージャでの米軍とイラク武装勢力の戦闘停止交渉が12日も継続し、非公式な停戦は、現地時間12日午前10時(0600GMT、日本時間午後3時)までさらに12時間延長されることになった。

イラク武装勢力と米海兵隊は前夜、ファルージャで戦闘を展開。11日に合意した非公式な停戦協定は、暗礁に乗り上げた。
この項終わり

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