愚行の世界史―トロイアからヴェトナムまで

バーバラ・タックマン著/大社 淑子訳
ISBN:4022557834
この本の書評を書きたい気分になったが,手元に無い本であった.
図書館あたりにはあるかな?
題名の通り世界史における愚行,失政を扱った本で,日本の真珠湾攻撃なんかもちらっと出てくるが,主に扱っている題材は

  1. トロイア戦争
  2. ルネサンス期の法王庁の堕落とプロテスタントの離反
  3. 英国とアメリカ独立戦争
  4. ベトナム戦争

である.
著者の定義によると愚行は

  1. 国益に反する行為が
  2. 同時代の警告の声や代替案を無視して
  3. 集団的な統治グループにより継続的に行われる

ことである.(のはずだ.)
トロイア戦争はちょっと違うが,他3つは全てこの要件があてはまる.
各章において,著書は愚行が行われた当時の歴史的状況を簡潔に再現し,また同時代人の警告の手記や手紙を拾い上げて,愚行を推進した統治グループにそれらの声が届いていたこと,そして政策の転換が実行可能であったことを示している.だが愚行を推進する愚かな指導者の常として自分に都合の悪いことは聞きたがらず,また自分の考えが間違っていたことを僅かでも認めるくらいなら,目下の政策を多少の犠牲を無視してでも遂行するほうを選んだ.そして犠牲が大きくなればなるほど,これだけの犠牲を払った以上はいまさら後には引けないという理由でさらなる愚行にのめり込んでいった.
著者のバーバラ・タックマンアメリカの歴史家.著書としては第一次世界大戦を扱ったピュリッツァー賞受賞作「八月の砲声」(ISBN:4480853359)が有名である.
個々の歴史の解釈については異論があるかもしれない.(特に法王庁のあたり.嫌いな作家だが塩野七生の「神の代理人」が同じ題材を扱っているISBN:410646506X)またこの本の最終章は船尾の光というタイトルがついていて,歴史というのは過ぎ去った出来事を照らし出すことあっても,これから起きる出来事を予測するには役に立たないというかなり悲観的な内容になっている.しかし過去の愚行の歴史を学ぶことはやはり無駄ではないと思う.愚かな指導者はいつの時代も同じようなことを言い,同じようなことをするのだ.愚行に直面する立場の人間としては心の備えをしておくためだけでも読む価値はあるだろう.

というエントリをUGたんのblogにトラバって僕もジーコ解任運動に参戦するのら!
えっ?イラク?小泉?なんすかそりゃ?

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