魔法使いはだれだ ― 大魔法使いクレストマンシー

魔法使いはだれだ ― 大魔法使いクレストマンシー

魔法使いはだれだ ― 大魔法使いクレストマンシー


ダイアナ・ウィン・ジョーンズを読んでみましたシリーズその1。

イギリスの問題家庭の児童ばかりが集められた学校が舞台。当然寄宿舎付きはお約束。そしてこの世界における問題というのは魔法。このイギリスは魔法使いが弾圧され火刑に処せられる世界で、処刑された魔法使いの遺児や魔法使いを手助けして刑務所に入れられた人の子供がこの学校に放り込まれる。そしてある日とある教室で「このクラスに魔法使いがいる」という告発がなされる。

「魔法」という言葉で誤魔化されそうになるが、思春期+学校という特異な状況が生み出す集団ヒステリーをモチーフとする話である。超常現象が次々と発生、血塗られた伝説が甦り、何子さん探しが始まり、力に目覚めた主人公達は追い込まれるというのが典型なパターン。「魔法使いはだれだ」もこのパターンを途中まではなぞるが、ホラー系にありがちなヒステリー調と無縁だし、病的な方向に走る前にちゃんとストップがかかる。そのストップをかけるのが「大魔法使いクレストマンシー」である。

何かの会合の途中で召還されたとかいうスタイリッシュな魔法使い、クレストマンシー、サスペンスな気分に蝕まれ始めた読者にとってはちょうどいいタイミングで出てくる解毒剤であり、ちょっと病的な方向に行きかけた作品世界にとっては癒しの手である。「この世界はどこかおかしい」と原因を探りにかかるあたりはまるで精神分析医かカウンセラーのようだ。病的な雰囲気に抗するには「冷静さ」と「ユーモア」、そして「魔法」が必要なんだなあと認識させてくれるのであった。でも結末は「ようやるわ」とかいいようがないんだけど。

それにしても児童書は高いなあ。新刊1,785円だぜ。このシリーズ全部に読むには古本か図書館に頼るしかないのだろうが、でもこういうのを自腹切って買うのが大人の義務なんだろうなあ。