ブレイブ・ストーリー

フジテレビは28日、出資しているアニメ制作会社ゴンゾ・ディジメーション・ホールディングと共同で、宮部みゆきさんのベストセラー小説「ブレイブ・ストーリー」をアニメ映画化すると発表した。

ブレイブ・ストーリー(上)
ブレイブ・ストーリー(下)

現実世界で問題を抱えちゃった少年が異世界に行って問題を「一応」解決して帰ってくる話.もちろん括弧付きの「一応」である.ガキが異世界で八面六臂の大活躍をしようが現実で針一本動くわけではない.世の中そんなに甘くはない.宮部みゆきは現実を描くにおいてはシビアな作家だ.
読者を選ぶ話だと思う.ある種の人たちは確実に弾かれる.僕も弾かれた1人で速い話,コアなファンタジーファンには向かない.逆に言えばそれ以外の人たちのためのお話である.
僕の場合何が不満だったかというと,異世界というのが既存のファンタジーのキャラクターやモチーフやエピソードの寄せ集めに過ぎないということである.普通の作家がこれをやると目も当てられない凡作になるが,さすが宮部みゆきできっちり読ませる.だがこれが多分僕にとっての最大の不満である.僕は「大変良くできました」なんて話はファンタジーでは読みたくないのだ.やはりどこが底が抜けていたり壊れていたりしてくれないと嫌なのだ.要するに「健康な人間による健康な人間のための健康なファンタジー」なのですね,ブレイブ・ストーリーは.
後,異世界に厚みがないのも不満.所詮は使い捨ての世界なのだろうな.

アニメ化についてはちょっと不安がある.

フジテレビの亀山千広映画事業局長は「母を救いたいがために少年が頑張るという普遍的なテーマがあり、全世界に通じる作品になると思う」と話している。

主人公はそういう健気なわかりやすい少年像には当てはまらないと思うぞ.この辺はさすが宮部みゆきだと思うが,もう少し等身大というか素に近い.
なんか「ネバーエンディング・ストーリー」(ASIN:B000232BMK)を酷くしたものにならなきゃいいけど.僕はラストシーン見て「それじゃ何の解決にもならんだろう」と頭抱えました.こういう話で異世界から持ち出していいのは希望だけだ。ミヒャエル・エンデ宮部みゆきもそこは外していないのだが。




[permalink][contents][page top]