熊とワルツを - リスクを愉しむプロジェクト管理/トム・デマルコ ティモシー・リスター

ISBN:4822281868
いい本だという書評はあちこちで書かれるだろうから,僕は書かない.逆のことを書く.この本は役にたたない.
僕くらいの年になると,この本に書いてあるようなことは,ほとんど読んだり見聞きしたりしている.デンバー空港の件もどこかで読んだ気がする.似たような別の悲惨な事例かもしれないが.第10章に「期日よりはやく終わるプロジェクト」の件が出てくる.期日よりプロジェクトが早く終わっても,見積もりがいい加減だという理由で報酬を得られるどころか罰せられ,期日より遅く終わっても見積もりがいい加減だという理由で罰せられるというやつである.しかしこのあたりの話は日経IT Proでも人月がらみの話で散々出ている.さらに言えば,僕はこのエピソードは見ていないのだが,StarTrekのミスター・スコットはこのあたりの機微をよく心得ていたらしい.
はっきり言えば,この本は,みんなどこかで読んだ話,どこかで見聞きした話の集大成にすぎない.この本と同じような本は既に何冊も書かれ,既にそれなりの数を売り捌いている.もし以前書かれた本に何かの力があるのなら,僕たちはとっくの昔にこの「熊とワルツを」に書かれたような悪状況からは手が切れているはずだ.にもかかわらずこういった本がまた書かれ,また売れる.そして何も変わらない.「熊とワルツ」も以前書かれた類似の本と同じ道を辿るだろう.
なぜ変わらないのかという理由についての意見はあるのだけど,これを書き出すと気が滅入るので今は書かない.とはいえ来年あたりに似たような本が出て,また売れるのは確実だ.今度は何とダンスする羽目になるのかは知らないけど.

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