ジュビロ磐田スタジアムの思い出(その2)

その1より続く


というわけで企業にとってサッカークラブ,あるいはクラブに所属する選手は広告媒体として価値はあるが,スタジアムの方は広告価値は皆無なのだ.である以上スタジアムへの投資が最小限に抑えられるのは当然である.ジュビロ磐田スタジアムにオーロラビジョンが設置されたのは割と最近のことで,日立台にはいまだにそんなものはない.

さらに言えばスタジアムの建設や改修にかかる費用も馬鹿にはならない.例えば現在千葉市が建設予定のスタジアムは収容人員2万人ほどで建設費用は80億を予定している.これはスポーツビジネスとは無関係な企業が負担する出費としてはとても正当化できない金額だ.磐田のオーロラビジョンの工事費用がいくらかかったのかはわからないが,億を下らない金額であるのは間違いない.
もっとも柏,磐田の親企業がクラブ自体への投資を怠ってきたわけではないのは確かである.柏は99年にナビスコ優勝.2000年の後期ステージは鹿島との直接対決に引き分けたため優勝は出来なかったが,王座まで後一歩に迫った.この年実は柏は年間勝ち点では鹿島を抑え首位だったのだが,2ステージ制という理不尽な制度のため無冠に終わった.磐田は2001年前期優勝,2002年は完全優勝を成し遂げた.
これに対し立派なスタジアムと不釣合いなクラブの例としては,我がベガルタ仙台をはじめいくつもあるのだが,ここでは鳥栖の例を挙げるに留める.鳥栖市には日本でも有数のサッカー専用スタジアムがある.総工費は約100億である.そして周知のように鳥栖をホームタウンとするクラブ,サガン鳥栖サガン鳥栖は経営危機に見舞われており鳥栖市に支援を求めている.しかし鳥栖市サガン鳥栖を支援する余裕はない.詳しくは西日本新聞記事を読んで欲しいのだが,鳥栖市がスタジアム建設費用として毎年,約7億を償還しており,さらにスタジアムの管理運営費に1億5千万ほどかかっている.県庁所在地でもない単なる地方都市である鳥栖市に,サッカーのためにこれ以上の負担を要求するのは間違っているだろう.ちなみにサガン鳥栖の年間予算は3億円強くらいである.
とはいえ,柏も磐田もクラブとしてはピークを過ぎたように僕には思える.柏は先に述べたように2000年は事実上の首位であったが,2001年は優勝が期待されたものの不発に終わった.そして2002年は東北の某クラブに5-2で粉砕されたことをきっかけにチームが崩壊し,リーグ最終節まで降格争いに巻き込まれた.今期は巻き返しを図ったものの2002と同じ年間12位に終わった.
磐田は2002年には完全優勝したが,僕の見るところではピークは2001年だったと思う.これを書いている時点では2003年の天皇杯の行方はわからないが,可能性は低くはないと思うけども,それは横浜と鹿島が明日潰し合うからであって,磐田自体のポテンシャルは高いとは思えない.そして柳本監督の辞任や藤田帰国問題に見られるように,あのクラブの,かつては日本一であったフロントには,明らかに何かの狂いが起き始めているように僕には思える.

さて僕はこのジュビロ磐田スタジアムを都合三回訪れている

1)2001年の4月くらい
ジュビロ磐田名古屋グランパスエイト

2)2001年5月19日
ジュビロ磐田コンサドーレ札幌

3)2003年11月08日
ジュビロ磐田ベガルタ仙台

このうち一番新しいベガルタ仙台戦は記憶も鮮明だし,僕にしては珍しく,いい加減とはいえメモなんて取っているのだけれど,メモの終わりに「グラブPK 成功 1-0」と書いてあるようなゲームについて何かが書けるようになるには,かなり長い時間がかかりそうだ.
それに対し一番古い名古屋戦は「4月くらい」とか書いてあるように,ゲーム自体の記憶はほぼゼロである.ストイコビッチがすげえ不満そうな顔をしてベンチに引っ込んだくらいか.むしろ鮮明に覚えているはゲーム開始前のことだ.土砂降りの雨の中,延々と並ばされ,1時間は待たされたこと.それに試合前のちょっとしたセレモニー.
今は中断という形になっているらしいが,当時東海地方の3つのフットボールクラブ,清水エスパルスジュビロ磐田名古屋グランパスエイトの間で東海チャンピオンシップというカップ戦が行われていた.若手を試すにはもってこいで,選手層の分厚いジュビロには,これでしかお目にかかれない選手がいたとか,まあそういう位置付けのカップ戦である.
この東海チャンピオンシップの前宣伝のために,試合前に3つのクラブのマスコットキャラクターがジュビロ磐田スタジアムに集まり,宣伝文句が書かれたのぼりを持ち,仲良く揃って場内を一周するというセレモニーが行われたのである.
ここまで読んで笑い出した貴方,貴方の想像はたぶん正しい.そう,あの3匹である.あの3匹が仲良く揃って場内を一周するなどというセレモニーが無事に終わるはずがない.のぼりを持って仲良く歩いていたのは最初のコーナーを回るあたりまでで,ジュビサポで満杯のホームチームゴール裏に出るや否や,この3匹の間でスタジアムの観客のウケを競う,壮絶な戦いが始まったのであった.

以下続く

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