やなものを見る

電車の中でやなものを見てしまった.
どっかの銀行のローン借り換えの広告で,なんかのモデルケースだとその銀行のローンに借り替えると年間36万,得になるらしい.そこまではいいとして,その先がすごい
「浮いたお金でハワイに行きましょう」
正確ではないが,こんな感じだった.
即座に今年の春あたりに見たNHKスペシャル「個人破産、アメリカ経済がおかしい」を思い出した.
その番組ではリファイナンスという手法が紹介されていた.ローンを借り替えることにより生まれる金銭的余裕を消費に回そうという発想である.
少し長いが,リファイナンス,及びそれがアメリカ経済に与える影響についてよく解説してある文章を引用する.


週末のアメリカのテレビで、FP(ファイナンシャル・プランナー)が1時間、数々の視聴者の質問に答え続ける番組がある。私もたまにしか見ないが、見ると必ずある質問は、「私の年収は2万5千ドルです。2万ドルのクレジットカード負債があるのですが、自己破産した方が得でしょうか?」。といった類のもの。 2週間前にこの番組を見た時はさらにひどかった。「私は新卒の23歳です。年収3万ドルですが、2年前にBMWの5シリーズを買ったので借金が2万5千ドルあります。今度新しい5シリーズが出たのでこれも欲しいのですが、どうやって資金を捻出すればよいでしょうか?」

貯蓄率の高い日本では考えられない事かもしれないが、誰かがお金を借りないと金融システムというのは上手く機能しない。お金を借りるのは何も企業だけである必要はなく、個人でもライフサイクルに合わせて借金は必要である。特にアメリカでは借金して学費を納めるというのは普通の事なので、社会生活は借金と共に始まるという人は多い。それはそうとしても、やはり上記のような番組を数回見ると本当にこの国は大丈夫なのかと思ってしまう。

2001年、テロにもかかわらずアメリカ経済がリセッションを脱出できたのは、言うまでもなく金融緩和のおかげである。自動車のゼロ金利キャンペーンや、住宅ローンの低金利でのリファイナンス(借り換え)によって個人消費が刺激された。特に流行ったのは「キャッシュアウト・リファイナンス」という方法である。リファイナンスによって月々の返済額を減らすという方法もあるが、「キャッシュアウト」というのは月々の返済額をそのままにし、値上がりした住宅を担保により多くローンを借り入れるという方法である。

キャッシュアウトによる景気刺激効果は小さくない。特にここ2年間、新規住宅ローンのうち6割は多かれ少なかれキャッシュアウトを伴う借り換えであり、これによって年間1000億ドルの現金が家計部門に転がり込んだと言われている。これは5月末に成立した「刺激的な」景気刺激策とほぼ同じ金額である。

それではキャッシュアウトによって得られた現金は何処に行ったのか?テロ後に自動車の販売台数が過去最高を記録したところを見ると、恐らくかなりの金額が自動車購入に向かったと推測できる。当社(Horiko Capital Management LLC )の調べではテロ直前がちょうど自動車買い替えサイクルに当たっており、タイミング的にもピッタリであった。ここ数年住宅価格の値上がりには目を見張るものがあったから、BMWといわず、メルセデスでもフェラーリでも買える人は沢山現れた筈である。

件の銀行が「キャッシュアウト・リファイナンス」をやっているかどうかはしらない.日本の今の不動産事情からしてキャッシュアウトなんてやりたくても出来ないと思う.とはいえ「浮いたお金でハワイに行こう」と呼びかける宣伝のうらに潜む発想はキャッシュアウト・リファイナンスと同じ発想であり,いかにもアメリカ的な消費至上主義の発想である.
先日のdesktop No.1の件といい,どうも日本がミニ・バブル的な状況に突入しているんじゃないかという気がする.


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