雑感その1

正直に言うとショックはあまりない.

あの日のゴール裏はいつも同じで明るかった.残留のかかった試合という感じは全くなかった.みんなお祭り気分でわくわくしていた.
僕自身はスタンドに入るまでは少し悲壮感があったが,スタンドに入ってしまえば,いつもの,ベガルタ仙台サポーターについてよく言われるところの,根拠のない楽観的ムードというやつに染まってしまった.
そしてあっさりあきらめた.大分のゴールが決まった瞬間に降格を確信した.もちろんサポーターとしてはあきらめてはいなかったが,サッカー観戦者の僕は審判を下していた.こんな,いつものように,前線でボールをキープできず,セカンドボールをろくに拾えず,パスやクリアのボールを相手にプレゼントし,敵がボールを持って自陣内に進入するとオタオタする弱いチームが残留できるはずがないと
こういう気分だったのは僕だけではないようで,ハーフタイムではみんな敗色濃厚だった.みんなサポーターとしては勝利を信じていたが,1サッカー観戦者としては降格を確信していたのだ.もちろん後半がはじまった瞬間,ついさっきまで「だめだこりゃ」なんてぼやいていたことはみんなケロッと忘れた.
以前宮城県民はベガルタ仙台がらみになると宮城県民はよくわからんと書いたがこれは撤回する.われわれベガルタ仙台サポーターは,全力で声を出す熱心なサポーターであり,冷静なサッカー観戦者であり,目の前で繰り広げられるスポーツイベントを楽しむ観客であり,そして大分旅行にきた観光客であった.いくつもの顔を持っていて,それらの顔の相互の間では矛盾があっても,僕たちはそれを矛盾とは思っていない.それが宮城県民である.ようするに埼玉や千葉のような,ただ東京に近いだけの田舎者よりもずっと都会的なのだ.僕たちがサポートするチームが公式戦21連敗を続けても見捨てなかった秘密はここにある.負けたのはサポーターとしては残念だが,それ以外の点ではやっぱり楽しかったのだ.
だから降格が決まった瞬間も「ああやっぱり」という程度のものだった.そうなる事はみんなずっと以前にわかっていたのだ.泣いていた人はいなかったと思う.もっとも正直なところ周囲の状況を確認する余裕はさすがに全くなかったのだが.
だから僕も周囲の人達も戦闘的なサポーターとしての旗は降ろして拍手をして選手たちを迎えた.コールリーダーは無理にでも戦闘的なサポーター*1の振りを続けたかったらしいのだが,そんなことはこっちの知ったことじゃない.サポーターとしては残念だし,いまだに悔しいのだが,それ以外の点では満足してスタジアムを後にした.
これが何の偽りもないあの日の真実である.

追記
河北の記事

http://www.kahoku.co.jp/spe/spe106/index.htm
やっとこの辺を見る気になれてきたが,やはり僕の受けた印象と少し違うなあ.泣いた人は記事によればいたらしいが愁嘆場という感じは全くなかった.いま思い返すと降格の風景があんな静かなものだとは予想していなかったし,やっぱり少しくらい泣いたほうがよかったのかな.

追記
やはり「拍手するな」だったようだ.わるいけどあの状況ではそっちの方がセンチメンタリズムだと思う.「僕たち厳しいサポ」ごっこしてるだけじゃん.



[parmalink][today top][page top]

*1:拍手をしろと言ったのか,するなと言ったのか,よく聞き取れなかった.たぶん後者だと思う.前者だとしたら素直に撤回してお詫びする