今日も半蔵門線は止まった

いつものことだが、止まった理由はいつもよりもずっと雄大である。
霧である。

<濃霧>埼玉県全域で交通機関に乱れ
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051028-00000027-mai-soci

これのおかげで東武伊勢佐木線が止まってしまい、乗り入れの関係で半蔵門線も止まってしまった。全線で運転見合わせ。さすが大自然。やることはスケールが違う。途中駅混雑のため5分遅れとは偉い違いだ。
しかも僕の乗った電車が停まった場所が怖かった。地下鉄半蔵門線内、それも駅と駅の間である。地下だから窓の外は真っ暗、PHSは圏外、外の様子はまったくわからない。頼りは車内アナウンスだけだ。
こういう閉鎖的な環境に閉じこめられると人間疑心暗鬼が募ってくる。車内アナウンスは「霧のため運転を見合わせています」と繰り返すばかりだ。でも確か地下鉄サリン事件の時もこうじゃなかったか。あの時も地下鉄に乗っている最中は「千代田線は事故のため運転を見合わせています」というアナウンスが繰り返されるだけだった。
大体今時、たかが霧くらいで電車がこんなに止まるものなのか。ひょっとしたら霧で止まったというのは嘘で、乗客がパニックに陥らないようにするための配慮ではないか。地上で何か重大な事件が起きているのを隠そうとしているのではないだろうか。地上ではきっとこんなことが起きているに違いない。

  • 東武伊勢佐木線内で自爆テロ発生。死傷者多数。
  • 霧が発生したのは本当だが、この霧によって首都圏は外部から完全に遮断されてしまった
  • 霧の中から現れたのは大怪獣サイタマキングだった。ウルトラマンがやってくるまで科特隊が必死の防戦を行っている。
  • 地上の人類は突然の核攻撃で滅亡してしまった。心優しい車掌さんが乗客を絶望させないために、「霧で止まった」という嘘のアナウンスを流し続けている

とまあ暇つぶしにこんな下らないことを考えていたら、電車は15分ほど止まった後にやっと動き出した。かなりの徐行運転でたびたび停車しつつもどうにか半蔵門までたどり着いた。遅延証明書を受けとり、改札を抜け、階段を上って地上に出た。
でも何も起きていなかった。
つまらん。
ニュースを見ても「自爆テロ」の記事はなかった。まして「謎の霧」も「大怪獣」も「核攻撃」の記事もない。ただ濃霧のため交通に混乱が発生したとあるばかりだ。
ブクマをみてもウヨだのGoogleだのWeb2.0だのといった凡庸な単語が目にはいるだけだ。僕が地下に閉じこめられている間に、こうした凡庸さを吹き飛ばすような素敵な事件は起きてくれなかったようだ。今日もまた朝から凡庸な一日が始まるらしい。
でもがっかりするにはまだ早いぞ。
あの霧は埼玉を中心に千葉、茨城、栃木、群馬そして東京の一部すら覆い尽くしたらしい。
かなり広範囲かつ大規模に発生したようだ。それも不自然なくらいに。
そしてホラーやファンタジーでは霧と言えばバンパイヤの代名詞である。
きっと地上に居てあの霧を吸い込んだ人間は夜になるとみなバンパイヤに変身するに違いないのだ。
そして地下鉄に乗っていてあの霧を吸わなかった僕は「地球最後の男 (ハヤカワ文庫 NV 151 モダンホラー・セレクション)」なのだ。たぶん。