二十一の短編、グレアム・グリーン


二十一の短編  ハヤカワepi文庫

二十一の短編 ハヤカワepi文庫


「廃物破壊者たち」
寂れた街の駐車場にたむろする少年達が廃屋同然の家屋を内部から手間をかけて解体する作業に没頭する光景を描く。
廃屋を破壊するのに特に理由はない。
普段はだらけている少年達だが、この時ばかりは高度の計画性を発揮し、創意工夫を重ねて手際よく家を破壊していく。途中、家の持ち主の老人が予想外に早く帰って来るというハプニングが起きるが、機転を利かせて便所に閉じこめる。老人には食事と毛布を差し入れるなどフォローもする。少年達に悪意はない。ただ邪魔されずに作業を完遂したかっただけである。
そして翌朝、廃屋は完璧に崩れ落ちる。
これは純然たるマツリの光景である。マツリは21世紀の日本のネットの専売特許ではなかったようだ。