猿の手受難の時代


猿の手 (恐怖と怪奇名作集4)

猿の手 (恐怖と怪奇名作集4)



説明不要だけど一応。
猿の手はホラー系の話に良く出てくるアイテムで、願い事を三つかなえてくれる魔力が込められている。ところがその願い事というのが皮肉というか悲惨な形で実現する。お金が欲しいと願ったりすると、身内の誰かが死んでその保険金という形で手に入るという具合に。
この猿の手のバリエーションとして、ちょっとした悪意が込められた願いが悲惨な形で実現するというパターンがある。運動部でレギュラーの座を競っているライバルがちょっと怪我をすればいいと、なんとかさんにお願いをしたら、そのライバルがちょっとどころか再起不能の大けがをしてしまったという話は誰もが一度や二度は読んだ事があるだろう。
ところでこの「猿の手」、あるいは「三つのお願い」というネタはちょとやりにくくなっているのではないだろうか。この手の話には誰も願うような些細な、無邪気な、ちょっと悪意があるくらいのお願いごとが必要なのだが、最近の世相ではこんなお願いはシャレにならない

遅刻しそうだから電車が事故か何かで遅れてくれれば言い訳が立つ
説明不要
明日いやな行事があるから学校が休校になってくれればいいのに
地震震度6、あるいは「今日はみなさんに悲しいお知らせがあります」
あいつ死んじゃえばいいのに
ほんとに悲惨な事件に巻き込まれて死んでしまう
お父さん、仕事、仕事って少しは家のことも考えてよ
リストラ、失業、専業主夫
モーニング娘のあいつキライなんだけど
突然やめてしまう

ほんとシャレにならない。
「電車が遅れれば」->「人身事故」なんてのは、最近では「×××HOLiC(3)(KCDX)」にも出てきたようなよくあるネタである。しかし現実はその遙か上を行ってしまった。このネタは日本ではほぼ封印だろう。
おそろくあの日、大阪で電車に乗っていた人で一人くらいは「電車が事故で遅れてくれれば」と願った人が一人くらいはいるはずである。僕だって「電車が遅れてくればくれれば遅延証明書がもらえて」とムシのいいことを考えるクチである。これからはこんなお願い事は封印しないといけない。もちろん僕は魔法とか呪いの類は信じないのだけど、そういうことが偶然とはいえ起こったらと考えるだけでもおぞましい。たぶん立ち直れないだろうなあ。
ほんと怖い世の中になった。ちょっと悪意のある願いごとが偶然とはいえ実現しかねない。そんなことがホラー小説の中ではなく現実の世界で起こりうる。



ところでなんでこういうエントリを思いついたかというと、まあそういうことです。