人類と建築の歴史
- 作者: 藤森照信
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/05/01
- メディア: 新書
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石器時代に始まり現代に至る建築の歴史を172頁の新書に収めている。
もちろんそんなことは普通に考えれば不可能で、大胆なトリックがある。
青銅器時代から産業革命までの歴史を僅か1章、20頁ほどに収めているのだ。
無茶と言いたいが、人類の建築の歴史は、万国共通の竪穴式住居に代表されるような円形の家に始まり、世界各国、各時代の多様な建築文化を経て、これまた万国共通の白い四角い箱と大きなガラス窓というバウハウス調の建物に至ったというのが著者の主張である。
人類が建築を作った最初の一歩は、世界どこでも共通で円形の家に住み、柱を立てて祈っていた。
(中略)
そして六歩目の二十世紀モダニズムによってヨーロッパも固有性を失い、世界は一つになった。
一つから始まり、多様にふくらみ、また一つへ。人類の建築の歴史は、約一万年して振り出しに戻ったのである。人類と建築の歴史 165〜166頁
最後に著者はこんなことを書いている。
歴史の終わりと、建築の消失点を目指してのこの漸近線的状態を二十一世紀の大勢と認めながら、しかし、それが何ともおもしろくないと考えている少数者がいる。歴史を偽造してでも根本的に新しい形を見てみたい。なんなら歴史の後もどりだってしよう。物としての手触り感を建築から失いたくない。多様な形の面白さを味わいたい。
人類と建築の歴史 168頁
これは建築だけに限った話だろうか。国家や社会や文化にもこうした思いを抱いている人は多いのではないか。そしてこうした人達の「歴史を偽造してでも」、「なんなら歴史の後もどりだってしよう」という行為がバックラッシュなどの面白くない事態を招いているのではなかろうか。