テリさんの『命』 かたずのむ国民

http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050325/mng_____tokuho__000.shtml

この手の記事はやはり東京新聞が面白いのであった。

「今、アメリカでは保守化の動きに対する攻撃が強まっている。神はこうした策動をより一層、目に見えるようにするため、私たちにテリ・シャイボを遣わしたのだ」

この発言は、CNNが独自に入手したとして、放送した録音テープの一部だ。話し手は、米議会下院の実力者トム・ディレイ共和党院内総務。栄養補給チューブを外すという行為は、キリスト教右派に対する明らかな攻撃であり、テリを守ることが神から与えられた使命というのだ。

その時は、まるで開戦か否かを決めるような静まりかえった異様な雰囲気だったという。議員の一人は「十三年ここにいるが、こんな雰囲気は初めてだ」と、ニューヨーク・タイムズ紙に語った。

それにしても異常な状況だ。二十一日午前零時すぎの下院議事堂。イースター休暇を中断して直ちにワシントンに戻れ、とのディレイ議員らの指示で共和党議員が集まってきたって前にも書いたが、国外にはスーダンイラクや、あるいはイランの核問題、北朝鮮などなど、アメリカ国内でもミネソタ州の銃乱射事件など、安楽死よりもっと重大な問題がいくらでもあるだろうに。
いろいろ考えた。「対外問題から目をそらす」、「宗教保守の謀略」、「マスコミのフレームアップ効果」。でも一番大胆でしっくりくるのがアメリカの没落だ。
何が没落かというと、先に挙げた問題でアメリカがなんとか解決できそうな問題は一つもない。スーダンは口先ではみんな偽善的なことをいっているが、アフリカの石油も出ないような最貧国に軍隊を送りたいのは、常任理事国入りを狙う日本だけだろう。イラクは泥沼、イランはとりあえず欧州待ちだがイスラエルはともかくアメリカが本気で解決したいと思っているかどうか怪しい。北朝鮮は六カ国協議がゴタゴタ。
国内にしたところで、発砲事件は先月も判事以下数名射殺して逃走や、ホテルで礼拝中に乱射、7人死亡なんて事件があったばかりだ。10日ほど前の話だ。(先月のことだと思ってました。調べて驚いた。)
もうアメリカは対外的にも国内的にも問題解決能力を失っていて、問題が解決してみんながハッピーな気分になるようなことは起きそうにない。
そんな中で降って湧いたのがこの安楽死問題だ。誰かの命が失われそうになっていて、私たちアメリカが迅速に行動すれば救えるかもしれない。
だから議会もホワイトハウスもあんなにも早く動いたのだろう。アメリカが国を挙げて動く事によって、まだ何かが出来るのだということを示したかったのだ。逆に言えばアメリカが総力を挙げても出来る事は、植物状態の女性一人を救うくらいの事しか残っていないのだ。
しかし皮肉にもその試みも失敗に終わってしまった。よくあることだがアメリカの総力は裁判所には勝てなかった。
この件はまだどうなるかはわからない。僕は行政府による何らかの超法規的な処置が執られると予想している。大統領まで出馬して駄目でしたではアメリカ全体に無力感が広がる。それは避けたいだろう。
しかしそこまでしてアメリカがハッピーな気分に浸りたいのなら、アメリカももうお終いであろうな。