アレキサンダー

かなり大胆なアレキサンダー映画。父フィリッポス王の時代からいきなりガウガメラの戦いまですっ飛んでいく。その後ニューヨークのようなバビロンに入城後、ひたすら東征。この東征が征旅というよりは放浪として描かれている。その後ベトナムっぽいインドでこれ以上進めないと悟り引き返す。後はバビロンで死去してThe End。これで3時間。物語自体はアレキサンダーの側近で後にエジプト王となるプトレマイオスの回想という形式を取っており、プトレマイオスは東方遠征を失敗と断じ、人種の融合など誰も信じてはいなかったと語る。
どうみてもアレキサンダーの生涯になぞらえたアメリカ帝国没落の予言である。アレキサンダーが没したのはバビロン、まさしく今のイラクなわけで皮肉が効きすぎ。アメリカで受けずにアメリカ以外の国でそこそこ受けるわけだ。それにしてもグラニコス川の戦いも、イッソスの戦いもカットされるというのはなんだかなあ。ガンダムに例えると第一話「ガンダム大地に立つ」の後が「ア・バオア・クーの戦い」になって後はZガンダムの鬱展開がひたすら続くようなものだ。もちろんゴルディアスの結び目を切るシーンもなし。
このゴルディアスの結び目を切らないアレキサンダーっていうのが本作のアレキサンダー像を象徴している。オリバー・ストーンの解釈だとアレキサンダーがひたすら東に向かった理由は一つは怖いお母さんから逃げるためであり、もう一つは克服すべき父親像を求めてということらしい。アレキサンダーの父フィリッポス王は暗殺されてしまったのでその代わりになったのがペルシャ帝国なのだ。ところがペルシャ王ダレイオス3世に自分ではとどめを刺せなかったので、ずるずると東に進み、もう1人のお父さん(笑)インドのラジャ、ポロス王に自ら槍をつけようして失敗。地面に叩きつけられる。これで憑き物が晴れたアレキサンダーはすごすごと帰って行くのである。
こんなアレキサンダーは嫌だ。(泣)
とにかくアレキサンダーが魅力に欠ける。ひとによってはこんなアンチヒーローも魅力的なのかも知れないが、そんなのはアレキサンダーをネタにしてやらないで欲しい。
予想したよりも悪い映画ではなかったが、ファランクスと戦象を見られた以外は収穫は0でした。個人的にラジー賞決定。

追記
ヒストリエファンの方へ。エウメネスの存在は確認できませんでした。メムノンもバルシネも出ません。(泣)