田園都市線の一風景

爺さんはどうみても場違いだった。
背広族だらけの車内では、スポーツコートに野球帽、冬なのに日焼けした深い皺だらけの顔は異種族だ。
僅かばかりのスペースにきちんと収まっている他の乗客と違い、両手で二人分のつり革を占有する。
たまに独り言を言い、ものをぽろぽろこぼす。こぼす度に床に座り込む。周りの乗客にぶつかる。ぶつかられた方は文句は言わない。そんな勇気はない。
座席に座ると今度は足をパタパタ踏みならす。また独り言。
そんな爺さんだからあたりに人がいなくなってしまい、かくして4人分の座席を確保して寝床とした。
この爺さんが無事降りられたかどうかはわからない。終点まで寝たままかもしれない。そもそも降りるあてがあったのだろうか。