吉祥寺 消えた街角
吉祥寺駅周辺を中心とした昭和二十年代から四十年代の記録写真集.
僕は吉祥寺にはさほど詳しくないのだが,それでも巻末の方に納められている「昭和28年の渋谷ハチ公前」の写真には驚かされる.当時の渋谷駅前は道路沿いは2階建て程度の八百屋などの生活臭が漂う商店が並び,その裏手は平屋の民家が密集していたのである.
確かに失われた光景ではあるが,では現在の渋谷駅前が昭和28年のころのままだったとして,何か嬉しいかというとノスタルジイ以外には何も嬉しくないだろう.一方,今から50年後に渋谷駅前の光景が完全に変貌を遂げていたとしても何の問題もないだろう.現在の渋谷駅前の光景がきれいさっぱり失われたとしても何も惜しいとは思わない.
日本は欧米に比べて都市景観に無頓着といわれるが,そもそも尊重したくなる,あるいは尊重に値する都市景観が存在しないのではなかろうか.
