アジアの海の大英帝国

アジアの海の大英帝国―19世紀海洋支配の構図 (講談社学術文庫)

冒頭に「本書は,対象時期を19世紀中葉に絞り,主要な舞台をアジアの海上に限定して,イギリス海軍の歴史を扱ったものである」と書いているが大嘘である.
19世紀中葉は大英帝国が覇権を確立した時期であり,欧州列強が東アジアへの進出を開始した時期でもあり,帆船の時代から蒸気船,さらには鉄船,装甲艦の時代へと移行した時期である.
よって19世紀中葉のイギリス海軍の歴史を書くという事はこの時代の海事史の全てを書くに等しい.「アジアの海の大英帝国」であるからアヘン戦争アロー号事件にはそれなりの紙数を割いているし,インド(インドもアジアなのだ)における英国の活動,蒸気船の建造史や蒸気船による外洋航路の確立.さらには装甲艦の発達史,そして英国の貿易政策を巡る論争といったものが300ページ足らずの文庫本に収まっている.


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