イラク ユートピアへの葬送

イラク

読み始め.
序は読んでいて死にそうになった.もうこの手の本を読み進める知的体力がなくなっているなあ.
でもここを抜けると本編はかなり楽である.とはいえ「イラクへの合衆国の攻撃をめぐって展開される物語への,作者の直接的諸印象ならびに反応の寄せ集め」だから読みやすいのあって,その先の二つの補遺,「より一貫した理論的分析」がまた難物そうである.
まあネット上の書評などを読んでもみんな補遺までは読んでなさそうには見える(笑).

この本を読むきっかけになったグアンタナモ基地の件であるが,直接的言及は一応あるのだけど,これとは別にジジェクが拷問について述べている箇所の指摘が適用できると思う.外注である.
外注と聞くとこの日記の読者の大半はたぶんいやーんな気分になると思うがそれが正解である.ジジェクソフトウェア産業の人間ではないので,先進国の企業が発展途上国の過酷労働,公害垂れ流しみたいな工場で生産された製品に自社のブランドマークをつけて売っている事例を取り上げているのだが.


「われわれは何人かの容疑者を,我々の同盟国の中で[拷問に対して]あまり神経質でない国に移動させる事を検討せねばならないだろう.たとえそれが偽善的であろうとも」.これが第一世界の民主制が今日ますます機能している,その仕方なのだ.自らの汚い下部を他国に「外注」する事によって,機能するのである

イラク ユートピアへの葬送 36ページ

つまるところ,あのグアンタナモ基地は人権上のタックス・ヘイブンなのですね.もちろん収容されている人間にとってはちっともヘイブンではありませんが.

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