マスターアンドコマンダー

公開初日に見に行きました。

で、僕は軍艦大好き、帆船大好きな人間なので素直に楽しめましたが、ふつうの人間が見に行くと少しつらいかもしれません。このあたりは以前書いた原作評に通じるところがあるかも。

とりあえず監督ピーター・ウィアー、主演 ラッセル・クロウに文句はないです。特撮も映画雑誌に乗っていたスチールで船がおもちゃ然としていたので不安だったのですが、杞憂だったようです。
僕が個人的に収穫だと思ったのは、実は衣装で、このあたりは帆船小説なんかを読んでいても、具体的なイメージがつかめないのですね。で、その頭の中でスルーしていたものが、今回具体的にビジュアル化されたわけで、これからは悩まなくてすむぞ。
海兵隊員は赤い服着ているし、将校の帽子は例の船型だし、しかしなんといっても一番感動したのは士官候補生のお子様達のコスチュームですな。フロックコート着てシルクハットかぶってるんだあ!盲点だったな、これは。萌え属性のある人はこれだけで参っていまうかもしれませんなあ。
が、やはり、おもしろいかというと駄目で、原因はピーター・ウィアーラッセル・クロウもインタビューで仄めかしているんだけど、脚本に問題ありです。しかも問題点の半分は原作から由来しているのでやっかいですな。
原作の問題点は、 以前にも書いたのだけど、主要登場人物がオーブリー艦長とドクターマチュリンしかいないわけで、原作なら脇役にもそこそこの書き込みがなされているんだけど、映画ではこの二人以外は台詞のあるその他大勢でしかないです。これじゃ話がもたんよ。
基本的なストーリーは、敵を追って地球を4分の1周するだけのという話で、いろいろ途中で埋め込んでも、内容のなさは隠せない。ディテールを楽しむ小説だと言われればそれまでだけどね。とにかく中だるみします。
で、輪をかけてひどいのが映画の脚本で、プロットに必然性が欠け、偶発的な出来事がだらだらと繋がるんですな。しかもそれを逆手にとって(?)、敵の方だけがまいどまいど奇襲に成功するもんだから、乗組員が敵が幽霊船だと思いこんじゃうとかいう話は、あのねえ、開き直りですかい?
敵を目の前にしてオーブリー艦長がドクターの治療のためにガラパゴス島に引き返すというのは、ありえねーと思ったし、元気になったドクターが標本採集に出かけて、島の反対側で敵の船を見つけるのは、おいおいとしか言いようがないし、オーブリー艦長がナナフシを見て偽装戦術を思いつくというのは論外。この映画、ゴールデングローブやアカデミーにノミネートされたんだけど、全て無冠に終わったのは、ライバルが強力すぎたせいもあるけど、全部脚本家のせいだわ。
あと最後の戦闘シーンも少し不満。やはりここは敵の艦尾を縦射しないと。そうじゃなきゃ二倍の大きさの敵艦は捕獲できませんぜ。ちなみの敵のアケロン号はたぶん原作第一巻に出てくるカカフルゴ号がモデルだと思うんだけど、この艦はしっかり縦射食らいました。
そういうわけで一般人はレンタルビデオかDVDを待つのが無難だと思うけれど、帆走可能な実物大レプリカの素晴らしさとか、大嵐の中ホーン岬を突破するシーンとか、最後の戦闘シーンとかはやはり大画面でないと十分に堪能できないわけで、絵を見に行くんだと腹を括るんであれば映画館に見に行くのもいいかもしんないです。
以上

おまけ
血とか死体とか苦手な人には向きません。特に負傷した腕を切断するシーンは、実際に腕を切断する光景そのものが出てくるわけではないのだけれど、僕でも引きました。

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