データ標準化から目をそらす守旧派の罪と罰

http://www.atmarkit.co.jp/fxml/tanpatsu/32proposal/02.html#b2
この緊急提言とやらは以前にも批判したけど,やっぱり電波さんは言い過ぎかもしれんが,書き手がいっちゃてるないう感じはある.
例えば長いけど


例えば、書籍のデータをCSVで送信すると、下記のようになる。
1994,TCP/IP入門,岩本,幸男,ビーコン書籍,1900

 このフォーマットで100社とEDIを開始した後、もし、101社目に参加した大手の取引先が「書籍名の直後にISBN番号を入れなけば取引できない」といったらどうなるか。取引をやめたくなければ、対応手段は2つしかない。第一の手段は、既存の取引先100社にお願いして各社のシステムを修正してもらい、かつ、100社が一斉に新しいシステムへ切り替える方法である。しかしこれは現実的ではない。現実的な次の手段は、101社目のお得意さま仕様の EDIシステムを、既存のEDIシステムと並行に立ち上げることである。通常、このようにしてEDIでは同じようなシステムが複数構築されてしまい、メンテナンスに翻弄されることもまれではない。

 しかし、書籍データがXMLで表現されていれば、下記のようにtitle要素の直後にISBN要素を挿入するだけでよい。
<?xml version='1.0' encoding='UTF-8'?>
<book year="1994">
<title>TCP/IP入門</title>
<ISBN>4-8443-17xx-x</ISBN>
<author>
<last>岩本</last>
<first>幸男</first>
</author>
<publisher>ビーコン書籍</publisher>
<price>1900</price>
</book>

 このISBN要素の挿入による、既存100社のシステムに対する影響はまったくない。つまり既存の100社に影響を与えず、101社目の大手と取引が開始できるのである。XMLを活用したシステムはタグ名を判断して処理を行うように設計されるため、知らない新規のタグ<ISBN>があっても無視するだけである。

この人XMLちゃんとわかってるの?どっかの会社のシステムがXMLデータをきちんとValidateとかしていたらどうするわけ?無視なんかしないよ.
いやそれ以前にXMLで各社間でデータをやりとりする場合,まずスキーマとか決めてから流通させるだろう.そういう場合どっかの会社の事情で,勝手にタグなんかいれられんだろう.それとも各社が適当に作ったWellFormedなデータが勝手にやりとりされているみたいな状況を想定している?恐ろしいな,それ.
こういうCSVXMLXML側に有利な状況を勝手にでっちあげて,XMLの優位性をぶちあげるなんてやりかたはXMLバブルのころ散々見たが,この人の頭の中身はそのまんまらしい.
しかもその下にXMLの特徴として,いまじゃ誰でも知っているようなことを延々と書いているし,タイムスリップしてきたとしか思えんなこの人.

その次


WebサービスSOAが開拓する未来像

 これらの課題を解決するのは、もちろんWebサービスSOA(サービス指向アーキテクチャ)によるダイナミックバインディングである。SOAとは複数業務で使用される機能を共通のサービス(部品)として切り出し、複数のシステムで共有できるようにするアーキテクチャである。SOAにより、企業は自社の得意とする機能をサービスとして公開することができ、新たなビジネスを展開することが可能となる。また、サービスの機能それ自体はさまざまな業務で再利用が可能となり、システム全体では大幅なコスト削減になる。再利用のメリットは開発段階での工数削減もさることながら、そのサービスがテスト済みであることによるメリットが大きい。また、サービス(部品)の組み合わせで構築されたシステムは、外界の変化に適応し、臨機応変な組み替えが容易である。

 取りあえず、つないだからといってコミュニケーションが保証されるわけではない。
(強調はmoleskinによる)

まずこれらの課題というのが,読んだけどよく分からん.
たぶん,直前に書いてある.

  • タグ名の標準化という大仕事
  • コミュニケーションはいつも同じ相手と行うとは限らない。新しいサービスやよりよいサービスを求めて、コミュニケーション先をダイナミックに「探す」そして「接続する」必要がある。

の二つなんだろうが,WebサービスSOAによってこれらの課題が具体的にどう解決されるのかまったく書いてない.ただセールストークが書いてあるだけだ.
しかもその下の一文とのつながりが不明.下の分とのつながりから判断して実は「WebサービスSOAが開拓する未来像」というセクションは「コードの問題」の下にはいるんじゃないかと睨んでいるが,そうだとしてもお粗末としかいいようがない.

しかも最後の結びにも問題がある


上記の課題がすべて解決できたとしても、世界中のすべての企業と自由に連携を行えるようになるわけではない。与信管理や法的な契約に関する問題など、企業間でビジネスを連携させる際には、さまざまな付帯作業が必要となる。現時点では、いくつかの課題が残されているが、インターネットほどWebサービスの運用を低コストに実現するプラットフォームは存在しない。取りあえずできるところから始めることが大切である。リスクを背負う価値は十分にある

(強調はmoleskinによる)

いくつかの課題」って,現状では「上記の課題がすべて解決できたとしても」って,仮定法で言ってますが,つまり現状ではまったく解決できていないわけで,しかも「与信管理や法的な契約に関する問題など、企業間でビジネスを連携させる際には」ってこれまた重大な課題なわけですが,こういうのを「いくつかの課題が残されているが、」で片付けないで欲しいのですけど.
あとご自身も上で指摘されているように信頼性セキュリティの問題があるわけで,これらに問題があるのならリスクを背負う価値全くありません.
全体の構成にも無茶があるというか,組織論みたいなレベルからXMLのタグレベルみたいな話を一つのコラムでやるのは無理ありすぎ.本人はアルファからオメガまでを気取っているのかもしれないけど,だからボロがいっぱい出るわけで.
しかしよくもここまで突込みどころ満載*1の文章を書けるものだし,それをまんま載せちゃう@ITの編集部も編集部だわ.

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*1:だれか別のところやって,結局このおっさんの文章には客観性という奴が欠けているのだわな