そろそろ人間の代わりに広告を読んでくれる機械が必要かね

というたわけた事を考えていたら,スタニスワフ・レムの「泰平ヨンの航星日記」の1篇を思い出してしまった.タイトルは忘れた.「第18回の旅」にでもしておこう(笑)
こういう話である.ある惑星で人間の代わりに全ての労働を引き受けてくれるロボットが発明され,資本家が競って導入した結果,生産現場から全ての人間がいなくなってしまった.当然人件費が0になり,大幅なコスト削減が達成され,ウハウハ儲かるとおもったら,労働者がみんな失業者になり無一文になってしまったので,生産物を消費できる人間がいなくなり,倉庫には在庫があふれ返ってしまった.(どっかの国の状況に似ている)
こまった資本家達はどうしたかというと,人間の代わりに消費活動を行ってくれるロボットを開発したのである.かくして資本主義社会における究極の疎外状況が達成された.そしてその行き着く先は...という話.
明らかに社会主義イデオロギーの影響下にある代物である.現在的視点で言えば「経済など極少数の富裕層がいれば回るのでその他大勢は不要さ」と嘯くのが正解であろう.
ちなみに「キノの旅」の4巻(ISBN:4840218447)収録の「働かなくてもいい国」でも同じ状況が扱われており,こちらでは一応もっと穏便な解決策が示されている.時雨沢恵一はレム読んでるのかな?たしかにキノの旅ヤングアダルト版泰平ヨンと言えない事もない.

追記
上では代物と呼び捨てたがこの話の真骨頂は「行き着く先」にあって,これも社会主義政権の一側面,それも北朝鮮ルーマニアのような全体主義的状況を示唆している.あれがずらりと並ぶ光景は集団墓地以外の何者でもあるまい.当時のレムの置かれた状況(レムはポーランドの作家)を考えるに,この話は資本主義批判のふりをした社会主義政権糾弾の意図があったのではないか.